長距離航海者の広場
エッセイ
【テーマ:食事について】
アンケート回答例:「花」の場合
(2007年02月05日掲載)
【質問1:航海中(走っている場合ならびにアンカレッジにいる場合)は、どのような食生活でしたか?】
・定番の料理名は?
・料理をする上で気をつけていたことは?
◇航海中
慣れて来てからは、出港前日か当日に、鍋に一杯おかずを煮た。シチューや具だくさんスープみたいなものを。出港後3日ぐらいは軽い船酔いになるので料理はしたくないし、あまり食欲が出ないので、汁気のものが食べやすい。出港直前にご飯を炊いて、1、2回分のおにぎりを作っておく。
朝はカップスープとクッキーやグラノラのビスケットなど。たまにホットケーキ。
日本を出た時は、昼と夜はご飯を炊いて、レトルトで丼やカレーライス。時々ラーメンやスパゲッティ。おやつにクッキーやフルーツゼリー。コーヒーやココア。
その他、料理のできる日は、野菜炒め、チャーハン、味噌汁、鶏肉の入らない親子丼ならぬ卵丼、やきそば、市販のソースを使ってスパゲッティ、炊き込みご飯、シチュー、スープ仕立てのマカロニ、魚が釣れたら魚のステーキ、浅漬け。
時々、缶詰のシチュー。
ワッチの夜食にカップヌードル、おにぎり、カップスープ、ココアなど。
南太平洋では、パパイヤやバナナが航海食にぴったり。特に出航直後は食が進まないので、のどごしのよい果物が食べやすい。
◇アンカレッジ
そう大差はないですが、町で買い物をしたら、肉や魚を食べます。入るものがデラックスになります。葉もの野菜も、買える時に食べるようにします。
スーパーで、ピザや冷凍食品などを買って来て、味見することも。
海外のスーパーで、裏に作り方のついた調味料パックを買って来て、材料をそろえて作ってみることも。日本にもよくありますが、肉や野菜を揃えれば、あとは簡単に作れるセットがあるんです。
工夫したことは?
 なるべくレパートリを広げること。栄養が偏らないように、材料の種類を広げること。野菜を多く摂るように心がけること。生鮮野菜が足りなくなると、缶詰の野菜(ミックスベジタブルや豆の水煮、マッシュルームなど)も使う。
・その他エピソードなどを教えてください。
 ヨット乗り同士や、行った先の地元の人々との一品持ち寄りパーティに誘われることがあるので、簡単に揃えられる材料で、持ち運びができて、人前に出せるようなレパートリーをいくつか持っておく必要がありますね。いつも同じ料理ではつまらないし。アラスカではスープ餃子が好評でしたが、国によっては、餃子の皮がなかなか手に入りません。炊き込みご飯のおにぎりも、よく持って行きました。
 日本人だと寿司を期待されるような気がするので、巻き寿司の作り方を覚えておくとか、いなり寿司用のあげ(缶詰やレトルトがあります)を持っておくといいかも。
 最初の2年半は、一口こんろだったので、苦労しました。ご飯とおかずが同時に作れなかったから。
【質問2:長持ちすると思った食材は?】
・野菜、果物、その他なんでも、長持ちするなぁと思った食べ物を教えてください。
 たまねぎ、いも類、にんにく、ネギ、キャベツ、りんご、オレンジ、卵
【質問3:食材を長持ちさせる工夫】
・常温で、または冷蔵庫を使用して、それぞれ、食材を長持ちさせる工夫をご存知でしたら、教えてください。
キャベツは新聞紙で巻いて風通しのよい場所に置き、時々チェックし、外側の葉が痛んできたら、ちぎって捨てる。芯の部分から奥まで腐りやすいので、買う時に裏側を見て、できるだけ芯の切り口が陥没していないものを買う。うまくいけば一ヶ月ぐらい持つ。
白菜も同じ。
野菜を混ぜて置かない。一部の野菜から出るガスで、腐敗が早くなるそうです。
ネギは根がついていたらバケツやボウルに入れ、少し水をやっておくと一ヶ月でも持つし、切り口からまた生えてきます。
レトルトや乾物の賞味期限は気にしない。
乾物は、フリーザーバッグなど密封袋に入れると湿気にくい。
レトルトは、たとえ二年経っても品質は問題ない(何度も実験済みです)。
ワカメやひじきなどは、乾いている限り、大丈夫。
ラーメンなどは、粉末スープが湿気ていても大丈夫。
乾燥しいたけなどは、湿気てきたら日に当てて干す。
チーズは冷蔵しなくても、空気にあたらないように包装してあれば、割と持つ。
味噌も常温で何ヶ月も持ちました。
時々手持ちの食品の棚卸しをする。特に、米がむれていないか、米や麺に虫がついていないか、缶詰に穴があいていないかをチェックする。<重要>
【質問4:冷蔵庫・冷凍庫】
・冷蔵庫や冷凍庫はお持ちでしたか?
 ありませんでした。缶詰や乾物を多用し、肉なしで親子丼やカレーライスをしたり、野菜炒めには缶詰のランチョンミートを使ったりしていました。ただ缶詰は、何を食べても缶詰らしい味がするので、飽きて来ますね。
 冷蔵庫なしでもやってはいけますが、あったほうが、まとめ買いができて経済的かなと思います。もちろん食事のレパートリーも広がるし。
 暑い所では、よその船で勧められた冷水が、ご馳走に思えました。毎日冷たい水が飲めるなんて、うらやましい、と。
 冷蔵庫か冷凍庫、どちらかひとつを選ぶとすれば、冷凍庫にします。
【質問5:お勧めの保存食】
・レトルト食品や缶詰など、お勧めの保存食品はなんでしたか?
日本製ではレトルト類。炊き込みご飯のもと。カレー。どんぶり。ぜんざい。ゼリー。
ラーメン、スパゲッティ、そうめん、やきそば(乾麺)、うどん、ビーフン。
ふりかけ。しっかり包装した餅。味噌。粉わさび。カレー粉。
さばの味噌煮や、さんまの蒲焼の缶詰。ゆであずきの缶詰。
カレールー(海外で買うと日本からの輸入品なので高い)とシチューのルー。
常温で長期保存できる野菜ジュース、果汁のジュース、牛乳、豆乳。
海外では、シチューや具入りスープの缶詰の種類が多い。ビーフシチュー、クリームシチュー、クラムチャウダー、アイリッシュシチュー、ミネストローネ、チキンヌードルスープなど。
豆の水煮缶。
ワカメ、ひじき、干ししいたけ、高野豆腐、切干大根、はるさめ、のり(ただし湿気やすい)。
粉末カップスープ。
チーズ。粉チーズ。
干しぶどう、プルーン、などのドライフルーツやナッツ。
ホットケーキミックス。海外ではパンケーキミックス。お好み焼きのもと。
乾燥豆。(あずき、大豆、いんげん、花豆、など)
フィジーのカレーの缶詰は、そのままカレーライスに。値段も安い。
グラノラ・バーや、ドライフルーツなどの入ったビスケット。クラッカー。
カップヌードルは寒い場所でワッチの時の夜食向き。手軽で暖まる。海外でも安く買え、日本にはないフレーバーも味わえる。メキシコではチリ味とか、フリホレス味などがあった。
フランス領のパテの缶詰。
いなり寿司用の煮付けたあげの缶詰。
粉末の浅漬けのもと。納豆ふりかけ。
【質問6:その他】
・その他、何か食事や料理、食材の入手などに関して、アイデアやエピソードなどありましたら教えてください。
 南太平洋でモヤシ作りをやってみましたが、うまくいきませんでした。発芽はしましたが、育てている間にだめになりました。
 海外になくて時々無性に懐かしく思ったのがシソの風味でした。今から行くとすれば、シソの葉の塩漬けを持つかな。ビン入りの乾燥シソは、匂いが飛んでしまいました。
「花」 トラベラー32 アメリカ製 FRP カッターリグ
航海時期 2000年6月〜2004年7月
航海エリア 太平洋一周(アラスカ、カナダ、アメリカ西海岸、メキシコ、マスケサス、タヒチ、サモア、トンガ、ニュージーランド、フィジー、ニューカレドニア、バヌアツ、ミクロネシア連邦、グアム)